落語家にとっての扇子

座ったまま話術のみで聴衆を魅了する落語家にとって、扇子は切っても切り離せない大切な商売道具。

視線の流し方や身振り、表情の変化で、あらゆる小道具に見立て、話にふくらみをもたせてしまう。

閉じた状態ならキセルや箸に、開いた状態ならどんぶりなどの器、徐々に開いていけば巻紙に早変わり。

そのほか、誰かが家に訪ねてきた場合の効果音として、根本部分で床を叩いて扉を叩く音を表現することも。

このように様々な用途を持つ高座での扇子は、落語扇や高座扇、楽屋用語で「かぜ」などと呼ばれ、サイズも一般的なものより大きめかつ頑丈。

扇の骨も普通は25〜60本使われているのに対し、高座扇は粋を重んじて15本と、かなり少なめ。

また真打になると自分の名前の入った高座扇を使うことができるけれど、基本的には柄や文字が極力入らない無地に近い物を使うことが多いという。

余計な模様が入っていると、聴衆の意識がそちらに向いてしまい、肝心の話に集中できなくなってしまうからだ。

とはいえ、なかには「話題になるから」と、ラインストーンでデコレーションした高座扇を持つつわものもいるとか。

シンプルな形状だけに、持ち主の感性がそのまま表れる扇子の世界。

ご贔屓筋や襲名披露の際に配る扇子にも個性が垣間見えて楽しそうだ。
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